映画「ゲット・アウト」の評価・作品情報・ネタバレ・感想

映画「ゲットアウト」の
評価作品情報ネタバレ人種差別の背景と考察感想

 

「ゲット・アウト」のムビメシュラン評価5

 従来の「野卑、下品、好色、無能」というレッテルの元の黒人差別ではなく、「差別なんてしていない」という人々の欺瞞を生々しくえぐるように描き出します。ホラー、サスペンスの要素も含んでおりエンターテイメント作品としてもとても楽しめます。「自分は違う」という自らの傲慢さを突きつけられる作品です。

 

「ゲット・アウト」の作品情報

<日本公開年月日>
2017年10月
<スタッフ>
・監督:ジョーダン・ピール
・脚本:ジョーダン・ピール
<出演>
ダニエル・カルーヤ
アリソン・ウィリアムズ
ブラッドリー・ウィットフォード
<あらすじ>
 ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人のクリスは白人の恋人ローズの実家に招待されます。予想に反して温かく迎えられますが、そこで働く黒人の使用人に違和感を抱き始めます。

「ゲット・アウト」の背景

異人種間結婚禁止法が違憲とされてから約40年

 米国で黒人と白人が結婚できるようになってから40年あまりがたちました。主人公のカップルの親世代が若い頃にはまだ黒人差別が合法だった訳ですから、ローズの実家に向かうにあたってクリスが不安を抱いていたのは至極当然と言えます。

<ネタバレを含みます>

 

従来の黒人差別の描かれ方と大きく異なる本作品

ローズとクリスへの対応を変える警察官

 ローズの実家に向かう途中、ローズが運転する車が鹿をはねてしまいます。駆けつけた警察官は運転していたローズだけでなく、クリスの身分証明書の提示も求めます。ローズは必要ないと抗議しますが、このような人種差別に慣れているであろうクリスは面倒を避けようと大人しく従おうとします。

ローズの父の善意のつもりの傲慢さ

 ローズの父親は、「オバマ政権に3期目があるならばオバマに投票するよ。」と話す一方で、黒人の使用人を雇っています。「親の介護のために雇ったが、親の死後にも解雇する気になれなくてね。」という言葉には「黒人が他の仕事を探すのは困難だろうし、幸いにも自分には彼らを雇う余裕もある。」という傲慢さが見え隠れします。

ローズの母の催眠術

 精神科医だというローズの母親は催眠術を使った禁煙法をクリスに薦めます。クリスは禁煙を望んではいるものの催眠術を受けることは拒みます。しかし夜中に目を覚ましたクリスにローズの母親は半ば無理やりに催眠術をかけてしまうのでした。ここでも本人の意志を無視した押し付けの善意がクリスを苦しめます。

パーティーの来客たち

 クリスを見るなりタイガー・ウッズを褒め称える老人、クリスの腕をベタベタ触り筋肉やクリスの精力についてローズに尋ねる不躾な女性、「黒が今の流行りだ」と話す男性。パーティーの来客たちは誰もクリスに対して嫌な顔はしません。むしろ気持ちが悪いくらいに好奇に満ちた視線をよせます。冒頭の警察官のような露骨な人種差別にはある程度慣れているクリスもこのパーティーの異様な雰囲気に気味悪さを覚えます。

従来の黒人差別との違い

 従来、「黒人は野卑で、下品で、好色で、知能が低い」という間違ったレッテルの元に描き出される差別がほとんどでした。本作品で登場する冒頭の警察官がまさにその典型でしょう。そういった差別は白人の中でも労働者階級の貧しい人々が助長してきました。一方で一部の裕福な知識層はそういった労働者階級とは一線を画し、黒人を受け入れることすらひとつのステイタスとして捉えています。本作品では上記の登場人物たちのように「差別なんてしていない。」と言う人たちの傲慢、さらに「差別をしていない」ことで彼らが享受している欺瞞に満ちた恩恵を生々しく描き出しています。

 

ベティ・ガブリエルの演技に戦慄

泣きながら笑う恐怖の使用人ジョージナ

 自身のスマホの充電器を抜かれていたことに動揺したクリスの元へ使用人のジョージナがやってきます。「白人ばかりの中にいるとナーバスになるだろ。」と話すクリスに対して、何かの感情を押し殺すように張り付いた笑顔で「そのような経験は一度もありません」と答えるジョージナでしたが、その目からは涙が次から次へとこぼれ落ちるのでした。
 後にジョージナの中にはローズの祖母の思考が移植されていることが判明します。このシーンでは彼女の奥底に残っていた「ジョージナ自身」が溢れ出そうになっていたのでしょう。このシーン、鳥肌が立ちました。ジョージナの中に完全に2人の人格が見える瞬間です。白人に体を乗っ取られ、自らの思考を閉じ込められてしまったジョージナが必死にクリスに助けを求める様子に戦慄しました。

 

ハッピーエンドの前に

 危うく白人に体を乗っ取られそうになるクリスでしたが最大の黒幕だったローズをも振り切り、機転を利かせなんとか脱出に成功します。ローズとの最後の死闘の真っ最中に警察車両が到着します。それを見たローズが「助けて!この人に襲われたの!」とまるで自分が被害者であるかのように叫びます。黒人の男と白人の女がそのような状況にいたらどちらが有利であるかは一目瞭然です。本当に最後の最後までローズって汚いヤツ!!

「ゲット・アウト」の感想

 もしもローズや彼女の実家アーミテージ家が、典型的(古典的)な黒人差別主義者であれば、クリスも彼らに近づくこともなかったことでしょう。本作品の恐ろしいところは善意に見せかけた質の悪い悪意です。ここまでの思惑がなくとも似たようなことを自分がしてしまっていないか、とても恐ろしくなりました。

 

2020.2.25  むびめしこ

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