映画「ホースガール」のネタバレと感想とラストシーンの考察
映画「ホースガール」の
評価・作品情報・ネタバレ・感想
「ホースガール」のムビメシュラン評価3
妄想型統合失調症の患者さんの初期症状を非常に正確に捉えた作品です。主人公サラの妄想を中心に主人公目線で描かれます。 サラの妄想が本人にとってはいかに現実で、恐ろしいものであるかが描かれ、サラの抱える不安がよく理解できます。
一方で病の中にあってもサラが大切にするものを描くことで、病ではなくサラ自身にフォーカスした非常にパーソナルな作品です。「病気ではなく人を診よ」とは医療従事者によく言われる言葉ですが、精神科医療に携わる方には是非観ていただきたい作品です。
「ホースガール」の作品情報
<日本公開年月日>
2020年2月(Netflix)
<スタッフ>
・監督:ジェナ・べイナ
・脚本:ジェナ・ベイナ アリソン・ブリー
<出演>
アリソン・ブリー
デビー・ライアン
ポール・ライザー
<あらすじ>
手芸と馬と超常現象犯罪ドラマが好きで、少し変わっているが心優しいサラ。いつからか不思議な夢を見始めた彼女の頭の中で、夢と現実の区別がつかなくなっていく。(Netflixより)
「ホースガール」のサラ役を演じたアリソン・ブリーについて
アリソンは主にアメリカのドラマ女優として活躍していますが、独立系の映画ニュースサイト「IndieWire」で本作品について自身の家族の話を赤裸々に語っています。
それによるとアリソンの祖母が統合失調症を患っており、母親はそれに伴うトラウマティックな体験を繰り返し経験していたそうです。彼女自身もうつ症状や突発的な発作に襲われるたびにその遺伝的な要因を感じているとのこと。「自分の心を信じられなくなることが最も恐ろしい。」という言葉はまさに本作品のテーマのひとつでもあるでしょう。
「ホースガール」のラストシーンの意味とは
サラは退院後、自身の妄想の中の「祖母のクローン」になりきり、かつて所有していた愛馬を勝手に持ち出し、UFOのようなものにアブダクションされて作品は幕を閉じます。このアブダクションシーンがあまりにも謎で解釈が難しいのですが、私はサラが死を選んだと理解しました。その理由は以下の3つです。
- 最後のカウンセリングで、回復の兆しが見られないまま退院した。
- うつ状態を脱し、むしろ躁転しているかのような(やけに)晴れ晴れしい様子であった。
- 西洋人にとって靴を脱ぐのはベッドで眠る(永眠)時である。
様々な解釈があると思うので、ぜひ皆さんの考え方をコメントしていただけたらとても嬉しいです。
「ホースガール」のメッセージとは
べイナ監督とアリソンは脚本を共同で書き上げましたが、決して「精神疾患映画」になることは望まず、サラという一人の女性の物語として描きたかったと語っています。馬が好きであることや仕事にやりがいを感じていることを丁寧に描いた理由はそこだったのですね。
「ホースガール」の感想
仕事柄、サラが時間の感覚に悩むあたりから既に統合失調症の患者さんの作品として観てしまいました。さらにその症状があまりにリアルだったので作り手の中に経験者がいるのかな、と思って観ていましたがまさか主演女優の体験だったとは思いませんでした。作品自体としてはシュールながらも104分間全く飽きない映像と脚本で、サラという女性の病気以外の側面も深く描いた作品だったと思います。
2020.2.13 むびめしこ