映画「ザセル」の評価と感想と心理学的考察

ムビメシュラン評価5
シュールレアリズムを映像化した作品

 映像、衣装、音楽どれもがとても美しい映画です。これらの洗練された美しさが狂気の世界の闇をより際立たせます。どんな人でも一つは心の中に闇を抱えているはずですが、闇があるということは光があるということです。どちらかがひとつで存在することはないことを改めて気づかせてくれます。

作品情報

<タイトル>
ザ セル
<日本公開年月日>
2001年3月
<スタッフ>
・監督:ターセム・シン
・脚本:マーク・プロトセヴィッチ
・音楽:ハワード・ショア
<出演>
ジェニファー・ロペス
ヴィンス・ヴォーン
<あらすじ>
 心理学者のキャサリン薬剤と機械を用いて患者の思考の中に潜ることでカウンセリングに類する交流をするという最先端の治療法に携わっています。その治療法にFBIが目をつけ、ある連続殺人犯の精神世界へ潜り捜査の手がかりを探し出すことになります。

 

このシーンいただきます!

 本作品には食事のシーンがありませんでした。

 

人の心を覗くということ

 私の本業は病院に勤務する薬剤師です。食事について語ることができなかった代わりに医療者の視点でこの映画を考察してみようと思います。
 医療の現場で、患者さんとのコミュニケーションを学ぶ際に「共感的理解」という言葉がよく登場します。患者さんの境遇や体験は時に私たちの理解を超えますが、そこで生じた「嬉しい」とか「悲しい」という感情に共感することで心の距離を縮めるのが「共感的理解」であり、コミュニケーションのコツの一つです。本作品に登場する治療法の危ういところは感情ではなく境遇や体験、想い出そのものを共有することでその人物に近づこうとする点です。その過程でキャサリンはスターガーの世界に囚われ、治療者の立場を忘れスターガーの視点に立ってしまいました。実は現実の医療の現場でも似たような事象はしばしば生じます。共感する能力に優れ、患者さんを救いたいという思いがより強い医療者に起こりがちです。
 キャサリンはなんとか自分を取り戻しますが、最後は自分自身の世界にスターガーを招き入れ、彼の人生をキャサリン自身の世界の中で終わらせてしまいます。これを現実の医療に置き換えると、患者さん自身が下すべき決定を、医療者が思い込みで代行してしまったことになります。スターガーの中の闇と光の葛藤に決着をつけるべきはスターガー自身だったのではないかと思うのです。
 とはいえ、そんな小難しいことは置いておいて映画の終わり方としては非常にスッキリとまとまっており、何度観ても楽しめる私の大好きな映画のひとつです。

 

ハワード・ショアの幻想的な音楽

 ところで最後にキャサリンが再度エドワードと対話をするシーン、雲ひとつない青空に桜のような花のピンク色が映える美しいシーンです。ここで流れる曲が「ロードオブザリング」の裂け谷のシーンの曲によく似ています。荘厳でミステリアスで物語の広がりを感じさせる音楽はハワード・ショアならではです。

2020.1.26  むびめしこ

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