「愛を読むひと」の評価・感想・ドイツの教育制度からの考察

映画「愛を読むひと」の
評価作品情報ドイツの教育制度ネタバレ感想

「愛を読むひと」のムビメシュラン評価4

  前半の濃厚なラブシーンが後半の重厚なテーマを際立たせます。たったひと夏燃え上がった愛はその後の2人の人生に大きな影響を及ぼし続けます。2人の関係は今のドイツとかつてのドイツの姿の強烈なメタファーとなって教育の重要性、戦争の真の被害者は誰なのかを問いかけます。

「愛を読むひと」の作品情報

<日本公開年月日>
2009年6月
<スタッフ>
・監督:スティーブン・ダルドリー
・原作:ベルンハルト・シュリンク
<出演>
ケイト・ウィンスレット
レイフ・ファインズ(「ハリー・ポッター」シリーズ他)
<あらすじ>
 15歳のひと夏、マイケルが関係を持った年上の女性と再会したのは8年後のナチス戦犯を裁く法廷でした。被告席に座る彼女に驚き、法学生として見守るマイケルでしたが彼女のある秘密に気がつきます。

「愛を読むひと」の背景

ドイツの三分技型教育制度

 日本では基本的に義務教育の期間全ての子供たちが同じ内容の教育を受けます。一方ドイツではギムナジウム(お勉強コース)、ハウプトシューレ(ビジネスコース)、ハウプトシューレ(手に職コース)に分かれます。現在では初期の4年間に同じ教育を受けた後にそれぞれのコースに分かれる制度に変わり、さらに二分技型への移行も進んでいるそうですが、ハンナの時代には教育を受け始める瞬間から枝分かれが始まっていました。職業上においてもそれぞれは指導する層、指導される層、両者の中間の層に位置付けられていました。文盲のハンナと、法学科に進学したマイケルがそれぞれどの階層の出身であったかは容易に想像がつきます。

▽▽以下ネタバレを含みます▽▽

文盲であることを隠し、逃げ続けたハンナ

 ハンナは非常に勤勉で向上心が強い女性でした。どの職場でもその働きぶりが認められ、読み書きのできる同僚よりも責任のある立場を任されたり、現場から内勤の仕事に昇進することもありました。一方で自身の受けてきた教育の低さが露呈することを常に恐れてもいました。その弱みをだれかに打ち明けたり、正面から向き合うことを避け続けたハンナでしたがついに獄中で文字を覚え始めたのです。

ハンナとの過去を負い目に感じ逃げ続けたマイケル

 ハンナがアウシュビッツ収容所での殺人容疑にかけられた際、ハンナが文盲であることを明かせば刑を軽くすることが可能でした。マイケルはハンナが文盲であることを恥じていることを理由にその事実を明かしませんでした。しかし本当にそれだけが理由でしょうか。高等教育を受けエリートとして生きていく自分の愛した女性がナチスに加担し、読み書きのできない女性であったことの恥ずかしさ。さらにそんな女性と関係があったことを周囲に知られたくないという思いがあったのではないでしょうか。ハンナに朗読テープを送り続けた行為は、愛した女性の背景と真正面から向き合うことができない自分の不甲斐なさの罪ほろぼしのように映りました。 
 ハンナが自身の弱みを受け入れ克服しようともがいた一方で、マイケルは最後までハンナが差し出した手を握り返すことはありませんでした。その罪深さに気がついたのはハンナを絶望の淵に追いやった後のことでした。

「愛を読むひと」の感想

 識字率と自分自身で考える能力は比例すると言われます。もしも受けた教育が「指導される層」としての教育ではなかったら。もしもハンナが十分に教育を受け、「自分で考える能力」を備えていたら。このような悲劇は起きていなかったかもしれません。

 非常に高い能力を備えながらも強いリーダーに支配され自身で考えることを放棄したかつてのドイツと、その過去を負い目に感じる一方で正面から向き合うことを恐れ続ける現在のドイツ。まるで両者をそのまま反映したような2人の物語でした。

 

2020.5.3. むびめしこ

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