「心のカルテ」の評価・作品情報・摂食障害と行動制限療法について・感想

映画「心のカルテ」の
評価作品情報食事シーン背景摂食障害と行動制限療法感想

 

「心のカルテ」のムビメシュラン評価3

 摂食障害を患った主人公エレンが心の病気は「治してもらう」のではなく「治すもの」だと気がつくまでの道のりを描きます。

「心のカルテ」の作品情報

<日本公開年月日>
2017年7月(Netflix)
<スタッフ>
・監督: マーティ・ノクソン
<出演>
リリー・コリンズ
キャリー・プレストン
キアヌ・リーブス
<あらすじ>
 摂食障害を抱える20歳のエレンは同様の疾患を抱えた少年少女が集まるグループホームに入所します。自信を取り囲む複雑な環境や、心の傷と向かい合い、健康な自分を取り戻す戦いが始まります。

「心のカルテ」のこのシーンいただきます!
〜魅惑のグーグークラスター〜

 エレンが密かに愛しているお菓子があります。それはグーグークラスターです。グーグークラスターは、カラメル、マシュマロヌガー、ローストピーナッツ、ミルクチョコレートで作られたひとつ240キロカロリーのチョコレート菓子です。エレンはこのお菓子が本当は大好きなのに、太ることが怖くて想像することすら避けていました。しかしルークや他の仲間たちと打ち解け、徐々に治療に意欲的になった時点でこのグーグークラスターを食べることができました。一度食べだしたら止まらないのでは、という恐怖から触ることすらできなかったエレンが回復に向けて自分自身で踏み出した大きな一歩でした。

背景

摂食障害とは

 アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)に従うと、摂食障害は拒食症と過食症に分けられます。拒食症はさらに制限型と過食/排出型に分かれます。自殺を除き、死に至る唯一の精神疾患であることや特効薬が存在しないことから拒食症の患者さんの治療は非常に難しいと言われています。

エレンが発症したきっかけ

 ダイエット、家族や友人など人間関係の悩み、性的なトラウマにより大人にになることへの拒絶など拒食症を発症するきっかけは実に様々です。エレンの場合はどうでしょう。実の母親がトランスジェンダーで女性と駆け落ち、その後のサポートは義母のスーザンが担いました。また性的なトラウマも示唆されていました。さらに自身のアート作品をきっかけにある少女が自死してしまったことなど、様々な要因が重なったのでしょう。

摂食障害を発症しやすい性格

 全ての患者さんに当てはまるわけではありませんが、制限型摂食障害の患者さんの性格には一定の傾向があります。まじめで頑張り屋さん、人に評価されたい、自分の気持ちを言葉で伝えるのが苦手、などです。

ベッカム医師による治療法

行動制限療法

 エレンは「門出の家」と呼ばれるグループホームで治療を受けます。「門出の家」には摂食障害に悩む7人の男女が暮らしています。1日に2度のグループセラピーがある以外は家の中で自由に過ごすことが出来ます。「いいこと」をするとポイントがたまり、外出することも出来るようになります。もちろん食べることでもポイントが上がります。
 スマホや面会などさまざまなことを禁止・制限し、体重の増加に伴って自由度が上がるという治療法は「行動制限療法」と呼ばれ、実際の精神医療の現場で行われています。

家族療法

 ベッカム医師が実践していたもう一つの治療法は患者を取り巻くキーパーソンとなる家族を呼び、医療者を含めてディスカッションをする「家族療法」です。お互いのすれ違いや誤解を解消したり、患者本人だけでなく家族の悩みや思いを共有することが目的です。しかし、必ずしも成功ばかりではなく本作品中のようにまるで「犯人探し」のようになってしまうことも少なくありません。そういった場合には医療者が軌道修正をします。非常にストレスフルで侵襲的な治療のため、患者本人が同席しない場合もあります。
 実際エレンは目の前で責任をなすりつけ合う母親とパートナー、そして義母を目の当たりにして自分をひどく責めてしまいました。しかし一番彼女を傷つけたのはその場に来ることすらしなかった父親でしょう。

エレンが自身と向き合うことになったきっかけ

 「門出の家」に暮らす唯一の男子であるルークとの関係や、ミーガンの流産などショッキングな出来事が重なりエレンは極度のうつ状態に陥ってしまいます。それにともない、せっかく増えていた体重も再び落ち込んでしまいました。そんなエレンが逃げ込んだのは実の母親ジュディの元でした。
 ジュディはエレンの病気の原因が自身の産後うつによるものかもしれないと語ります。その頃十分にエレンのお世話ができなかった分を取り戻したいと模擬授乳を試みます。このあたりやや突拍子もない発想で私はついていけなかったのですが、エレンはこれをきっかけに自分の人生を振り返ります。「模擬授乳」自体というよりも、母親の悩みを共有したことで愛を再確認出来たのかもしれませんね。自らの意思で「門出の家」に戻り、治療を再スタートさせたのでした。

 

感想

 本作品はリリー・コリンズの痩せっぷりに批判も相次いだようです。骨ばった少女を映像化すること自体がこの病気を助長するとの考えからだそうです。確かに一理あるでしょう。しかし摂食障害と戦う少女たちの苦悩を多くの人に知ってほしいな、とも思います。「食べればいいだけなのに」で片付けられない彼女たちの苦しみを間近に見てきた分、心から彼女たちを応援します。

2020.4.1. むびめしこ

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