映画「アンカット・ダイヤモンド」の感想と竜の黄金病についての考察とネタバレ
映画「アンカットダイヤモンド」の
評価・作品情報・考察
ムビメシュラン評価3
大人向け「ホビットの冒険」
自転車操業のろくでなし男が起死回生の一攫千金を狙ってあれこれ奮闘する暴力暴言暴力暴力の作品です。自分の器よりはるかに大きなお宝を手にした人間がさらに強欲になっていく様を描きます。コメディ作品のお人好しでおっちょこちょいな主人公が多いアダム・サンドラーには珍しい役柄でしたがその演技は非常に素晴らしく、ファンの方もそうでない方も一見の価値ありです。非常に騒々しく、結末も楽しいものではなかったため評価3としましたが、4寄りの3です。
「アンカット・ダイヤモンド」の作品情報
<日本公開年月日>
本邦劇場公開なし Netflixにて2020年1月
<スタッフ>
・監督:ベニー・サフディ ジョシュ・サフディ
<出演>
アダム・サンドラー
ラキース・スタンフィールド
ジュリア・フォックス
<あらすじ>
主人公のハワードは借金を賭け事とさらなる借金でリカバリーしようとする破天荒な宝石商です。手に入れたブラックオパールの原石を利用した一攫千金を企むが、トラブルがトラブルを呼んでしまう。
ハワードにとってのポリープとは
物語の核となるブラックオパールはニューヨークからはるか離れたエチオピアで採掘されます。画面はこのブラックオパールの輝きの世界にズームインし、そのまま主人公ハワードのポリープを見つけた大腸カメラの映像につながります。このブラックオパールがハワードにとっての命取りになることのメタファーでしょう。
ハワードのセリフ「これは中つ国の石」からの考察
「竜の黄金病」について
ハワードがブラックオパールをプロバスケットボール選手のKGに見せた際に「これは中つ国の石だ(注:中つ国は「指輪物語」や「ホビットの冒険」の舞台となる世界)。」と話します。非常に古い石であることと同時に強欲の象徴であることをハワードは知らず知らずのうちに理解していたのでしょう。ハワードは「ホビット」にでてくる「竜の黄金病」に陥っているのです。「竜の黄金病」とは強欲な龍を倒して黄金の山を手に入れたドワーフの王がそれらを持ち逃げし、今度は自らが強欲と独占欲にまみれてしまうことを指します。
ブラックオパールの魅力
そんなハワードは手に入れたブラックオパールを利用して一攫千金を企みます。一方でKGもこのブラックオパールの魅力に取り憑かれた一人でした。KGはこのブラックオパールが勝利の験担ぎになると思い込み、非常に気に入ります。このブラックオパールをどうしても手に入れたいという気持ちがさらにトラブルを呼び込むことになります。
<この先ネタバレを含みます>
ブラックオパールが招いた破滅
ブラックオパールを利用した企みは破れかぶれながらも成功し、ハワードは莫大な財産を手にしました。しかし喜びはほんの一瞬で、ブラックオパールがもたらした運は自身の命とともに尽きるのでした。画面はその傷口から再び冒頭のブラックオパールを思わせる輝きの世界へと入っていき、この負の連鎖が終わらないことを示唆して映画は終わります。
後味も大人向け
冒頭で本作品について大人向けの「ホビットの冒険」であると書きました。強欲が破滅を招き、さらにその負の連鎖が繰り返されるという普遍的なテーマは共通していますが、こちらは結末も後味も大人向けカカオ99%くらいビターなものでした。
2020.2.4 むびめしこ